旅は人生の縮図っていうけど……「こういう旅はもう二度としないだろう」と思う旅ってどんな旅?

Pocket

あなたは旅が好きですか?

好きならどんな旅が自分に合っているかは分かるでしょうか。『こういう旅はもう二度としないだろう』(銀色夏生/幻冬舎)は、著者自らが好きな旅のスタイルを知るために2016年1月から約半年間、一月に一回のペースで旅行の記録を綴ったエッセイです。

旅に発つことを思い立ったのは、それまで子育てなどがありずっと行けなかったけれど、子どもが大きくなってそろそろ再開したいと思ったから。

でも、自分はどんな旅を一人でできるのか分からない。それを知るために、まずは準備運動としてツアー旅行に参加することとしたのでした。訪問国は、ベトナム、ニュージーランド、スリランカ、インド、イタリアの5カ国。国としてはそれほどマイナーではないにしても、行き先はコテコテの観光地を避けたところが中心です。なんとニュージーランドでは、先住民のワイタハ族のセレモニーを体験するツアーに参加します。

旅行エッセイは、そこで見たものや食べたものなど、滞在先に関する情報が多いことが一般的です。読者もそうしたものを期待するのではないでしょうか。本書も確かにそのような記述はたくさんあります。しかし、語り口が非常に淡々としている。おもしろくないものはおもしろくない、おいしくないものはおいしくない、などそのとき感じたことを率直かつ簡潔に記述しています。

他のツアー参加者を観察しながら「人それぞれその人に見合うものを見ているのだろう」「彼女のいる世界は私の世界とは違うだろうから私が心配することはないのだろう。」などと書いている部分には、著者のクールさも感じられます。冒頭に旅の目的を書いているように、旅の記録にはどんな場所やシチュエーションが自分好みなのかを自問している場面が多く出てきます。なぜ、それをいいと思ったのか、反対になぜ好みではないのか。旅の目的を貪欲に遂行していくのです。そして、4カ国目であるインドから帰国すると、予約していたツアーのいくつかをキャンセルします。これまでの旅で自分はツアー旅行向きでないことが分かったからです。

どの旅も一度きりでどの旅も振り返れば懐かしい。どの旅にもそれぞれに他にはないよさがある。そしてどの人からも心に何かを刻まれた。だからまたすぐに行きたくなる。

これまであまりにも淡々としていたために、末尾の「旅の記録を振り返って」を読むまでは、著者がこの一連の旅を楽しんでいたことにうっかり気がつきませんでした。

本書は読み手に同じところを旅したいと思わせるようなエッセイではありません。けれど、旅の仕方は十人十色。旅を通じて人生の節目に自分の生き方を見つめるという視点や、著者のオリジナルの視点には大変興味深いものがあります。「旅は人生の縮図」といいますから。

Pocket

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です