実は○○は日本の伝統じゃなかった?!「伝統」はどれくらい続いたら伝統か

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日本人は「伝統」にはめっぽう弱い。「日本では古くからそうです」と言われればなんとなくありがたく思い、すぐに信用する。(中略)だが、待ってください。その「伝統」は本当に「古くからそう」なのか?(中略)いつ頃から続いていれば、「日本の伝統」でしょうか?

 

初詣や神前結婚式、桜、大安・仏滅、三世代同居など、私たちの多くはそれらを伝統と信じて疑わないでしょう。そうしたものについて、本当に伝統かどうか、私たちがどのようにして伝統を受け入れてきたのかを『「日本の伝統」の正体』(藤井青銅/柏書房)が検証しています。

 

本書で、興味深かったものを3つ紹介します。1つ目は、初詣。企業が作ったイベントといえば、すでにクリスマス、バレンタイン、ホワイトデーなどが有名です。

これらは文字面からも外国由来であることが明らかなので、「伝統」ではないと判別がつきます。しかし、初詣もどうやらその流れを汲んでいるようなのです。なんと、初詣は鉄道会社が作ったイベントだといいます。

初詣の元となる風習は、恵方参り。江戸時代、江戸から見て縁起がいい方角にある郊外の寺社に参詣するのが人々の行楽でした。明治になって、鉄道が敷設されるようになると鉄道会社が乗降客を増やすため、恵方参りを活用することを考えました。

私鉄ができると、ますます集客合戦は盛んになり、鉄道会社は新聞を活用して広告宣伝に努めました。そのうち恵方に当たらない年であっても参詣を勧めるようになっていき、現在もその名残で成田山や川崎大師への初詣が有名だといいます。

 

2つ目は、元号。現在、役所や企業の文書では元号と西暦が入り交じって使用されていいます。元号は日本国内でしか通用しないものであるし、元号と西暦の変換が煩わしいので、いっそのこと西暦に統一したらどうかと思う人も少なくないでしょう。

そんな人が、元号には割と最近まで法的な根拠がなかったと知ったら、驚きを禁じ得ないのではないでしょうか。元号に法的根拠が与えられたのは昭和54年。まだ半世紀も経っていません。元号に伝統があるのは間違いいことですが、結構いいかげんだったことが分かります。

 

最後に紹介するのは、ソメイヨシノ。古くから日本人は桜を愛し「パッと散るから美しい」などといわれてきた。しかし実際は、ヨメイヨシノができたのは明治になってからのこと。現在、日本にある桜の8割がソメイヨシノだとされているが、それらは接ぎ木によってできたものだ。つまり、ソメイヨシノはクローンなので同じ時期に一斉に花開く。日本古来の桜はヤマザクラのほか各種あり、花見を楽しめる時期も1カ月ほどあったという。散り際の美しさが強調されたのは第二次世界大戦中のこと。神風特攻隊の部隊名にも付けられていた。

 

本書はトンデモな伝統を暴露することが目的ではありません。伝統は時代の風潮に合わせて柔軟に変化しているものも多いです。しかし人は今、自分が見ているものこそ伝統だと思い込みがちです。実際にはほんの数十年しか経っていなくても、自分が生まれる前からあれば、昔からあるものだと思ってしまいます。中には権利や権益を守るための見せかけの「伝統」もあるのに。

 

長く続けてきた「伝統」に何か不都合が生じた場合、「なぜこうしているのか?」とその理由を考えます。考えて、原因がわかれば改善すればいいし、止めたっていいのです。ところが、「なぜこうしているのか?」への答えが「伝統だから」では、なんだか同じ所をぐるぐる回っているようで、改善の糸口がありません。「伝統」という言葉には、どうやらそういう魔力がある。

 

本書は、ともすれば思考停止してしまいがちな「伝統」に一石を投じるものだといえるかもしれません。

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