「いいね!」の数を増やす裏ワザは日本脱出?!国外に「居場所」を求めた人たち

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「海外で働く日本人」と聞いてどんなイメージを持つでしょうか。

語学が堪能で、意識高い系の華々しい経歴を歩む人を想像するかもしれません。しかし、『だから居場所が欲しかった。バンコクコールセンターで働く日本人』(水谷竹秀/集英社)で扱っているのは、異色のテーマ。

本書は、バンコクで働くコールセンター経験者への地道な取材に基づいて構成されています。コールセンターで使うのは日本語だけ。英語も現地の言葉も必要ありません。特殊な技能も不問なので「コールセンターでしか働けない」人が集まる場所なのです。そこで働く日本人の特徴について、ある経験者はこのように表現しています。

学生の時、クラスに必ず一人か二人は変な子がいたじゃないですか?コールセンターはそれが全員集合したみたいな職場です。(中略)日本社会に適応して、出世するとか、家庭を持つとか、そういうレールに何の疑問も持たず、すいすい世の中を渡っていける人はここにいないなっていう感じがしますね。そんな環境に私も居心地の好さを感じているのかな

 

本書に登場するのは、日本で一般的にはレールを踏み外した、とされている人ばかりです。タイの男娼にハマった女たち、夜逃げした家族、同性愛者などなど。

なぜバンコクにコールセンターがあるのか?

それは90年代の後半以降に非正規雇用労働者が増えたことと関係しています。コスト削減を求められた日系企業はコールセンターを外注することで、人件費を削減して来ました。

海外のコールセンターという職種では、日本の最低賃金が適用されません。そんなコールセンターの仕事にはやりがいがない代わりに、責任もありません。職種の位置づけは現地邦人の間でも低いため、恥ずかしくて人には言えない、と考えている人も多いといいます。それでも、「日本で非正規労働者として困窮生活が続くとすれば、バンコクのコールセンターで働いた方が経済的にも精神的にも満たされる可能性が高い」ためコールセンターを選ぶ人は少なくないのです。

こうした話題は非常にセンシティブな問題のため、メディアやSNSで取り上げたら炎上必至でしょう。

著者は、日本の非正規雇用の問題を全面的に自己責任論とすることにも、社会のせいにすることにも疑問を持っています。自らの行動の結果、日本から「逃げた」人がいる一方でコールセンターの仕事を踏み台にして起業したり、タイにいる間に語学力を磨き日本に帰国して、外資系企業に就職したりしている人もいるからです。しかし、多くの面で著者はコールセンターで働く日本人に同情的あるいは親和的な態度を取っていることがうかがえます。

それは、著者自身の生い立ちとも関係があるようです。著者の水谷氏は上智大学卒業後、新聞記者やカメラマンを経てフリーになったノンフィクションライター。そもそも著者がなぜこうした人たちを取材対象に選んだのだろうと思っていました。著者自身も「居場所」を探している一人だったのです。

海外にいる方が自分の存在意義を感じられるのだ。海外は承認欲求を満たせる「居場所」、あるいは「心の拠り所」なのではないか。ひとたび日本を飛び出せば「いいね!」の数が増えていく。その居場所として、海外という選択肢が浮かび上がっただけではないだろうか。

 

著者の現在の拠点もフィリピンにあるといいます。日本社会での生活に息苦しさと違和感を覚え続けてきた著者も、コールセンターで働く日本人と同じように「もう日本に帰るつもりはない」のかもしれません。

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